米国けんきゅうにっき ヘモステイン
学位取得後、研究者として米国へ。このさきどのようなことが待ち受けているのでしょうか?
 あ~、ハラヘッタ。でも今はラボから出られないのでがまんがまん......明日からまた精製をやるので、その準備もしなければ。来週はミネソタ大から知り合いの先生がやってくる。講演のためなのだが、たぶんその前後はディスカッション等があるのでバタバタすることだろう。そんなワケで比較的時間に余裕のある今週中に精製を終えたいのである。そーいうわけで、今夜は早めに帰宅してカツを揚げようと思う。

 さて久々に研究の話題。現在、タンパク質同士の相互作用を調べている。で、ワタシのターゲットにしている酵素といくつかのタンパク質の相互作用なのだが、今回はネガティヴコントロールとしてウシの心臓由来のチトクロムcとの相互作用を調べた。

 ネイティヴの電気泳動ゲルではチトクロムc存在下のほうが非存在下よりも移動度が遅かったため、また光散乱でもチトクロムc存在下では粒子径が大きく観測されたため、チトクロムcは結合してターゲット酵素と複合体を形成しているのではと思ったのだ。そこでゲル上のバンドにチトクロムcが含まれているかを確認するための分析法を模索していた。もしチトクロムcの抗体を持っていればウエスタンブロットで確認できるのだが、ウチのラボにはそれはないのでタイトルにあるようにヘム(ポルフィリンを配位子とする鉄錯体の総称)のみを選択的に染色するヘムステインを行うことにした。

 今回のヘムステインはかなり初期の論文(Francis, R. T. and Becker, R. R. Anal. Biochem., 1984, 136, 509-514)を元にしている。基本原理はシトクロムに含まれるヘムによる過酸化水素存在条件でのペルオキシダーゼ反応である。ヘムと過酸化水素の組み合わせは酸化剤として働くので、この酸化剤でほどよく酸化されてしまいかつ酸化され生成したものが特徴的な色を持てば、色の存在がヘムの存在を示唆することになる。参考の文献ではo-ジアニシジン(IUPAC名は3,3'-dimethoxybeizidine)の酸化による呈色を利用している。(3つのベンジジン類をテストしており、o-ジアニシジンがテストした中でもっとも感度が良いという結論をだしている。)なおこの酸化生成物にさらに1-ナフトールを作用させることでこの呈色反応をさらに高感度にする(インドフェノールブルーの形成)キットが販売されているが、これはナディ反応(Nadi reaction or peroxidase reaction)を利用したものだ。

 ちなみにo-ジアニシジンは発ガン性を持つ化合物なので注意が必要。ラボの仲間はワタシがチキンだと思っているよーだが、合成をやってきたからそんなコトはいえないのである。危険なものはキケンであるとしっかり認識すべきである。まあその前からトリクロロ酢酸でゲルを洗ったりするから、ヘムステインをやる際は必要以上に注意してしまう。トリクロロ酢酸の12.5%溶液でまずゲルを洗い、そのあとイオン交換水でトリクロロ酢酸を洗浄する。これに0.2gのo-ジアニシジンを180mLのイオン交換水に溶かし、ゲルに注ぐ直前にpH4.4で調整したクエン酸ナトリウム溶液と30%の過酸化水素水を加え、ゲルを浸しておく。そーするともしヘムを含むバンドがアル場合、最初は深い緑色に染色されるが徐々に茶色になる。満足いくまで染色したらイオン交換水で洗浄しておしまい。この原報で興味深いのはヘムがタンパク質に共有結合していない場合、変性条件でのヘムステインはうまく染色されないということだ。これは変性中にタンパク質からヘムがとれてしまうからだという。ウシ心臓由来のチトクロムcは共有結合のため変性させてもヘムステインで染色される。(だからヘムステインのポジティヴコントロールに使える。)またこれにさらにクマシアンブルーでの染色(SDS-PAGEで用いられる染色法)も可能であるというのも重要な要素だ。

 ワタシ自身の実験結果はあまり芳しくはなかったが1-ナフトールを作用させる方法(ナディ反応)も検討すべきかもしれない。

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【2008/02/20 10:09】 | 研究
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