米国けんきゅうにっき 夏時間
学位取得後、研究者として米国へ。このさきどのようなことが待ち受けているのでしょうか?
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 さて今朝はケータイの目覚まし機能でたたき起こされた。通常通り、午前7時にアラームが鳴るのだが目覚まし時計の時間はまだ6時。つまり夏時間(Daylight Saving Time)に入ったのだ。これ法改正のため昨年よりも繰り上がってきたのだが、今日のお天気はちょっとどんより曇り気味のうえ、そとには雪が残っている状態。まあちょいと早すぎのよーな気もしないでもない......

 先週はほとんどカゼをひいていた。のどが痛くてカラダがダルイのだ。カゼなんて久しぶりだったので、さすがに今回はちょいと長引いてしまった。ただどーやら学生さんの間でも流行っているらしく、Fくんやら文化人類学(anthropology)の学生さんからもその話を聞いた。また日本にフェデックス経由で送ったサンプルの書類がどこか途中でなくなってしまったらしく、戻ってくるという不手際が発生。サンプルは問題なかったのだが、体調の悪いときにはろくなコトがない。


 閑話休題。

 先月から論文精読のくせをつけるため(ちなみに自分のためにというわけではない)、論文の抄録会をやっている。ワタシの学生時代では当然のように行われていたものだが、アメリカではみんな論文を自発的に読まないのでなにしろ知識が浅い。(まあだから日本で学位をとってアメリカにポスドクにくればわかると思うが、英語が不自由な代わりに知識というアドバンテージを感じるハズだ、たぶん。)そーいうわけで同じ化学科のポスドクのMさんと同僚のDalia、そしてウチの学生のFくんというメンバーで始めた。分野はもうそれこそ何でも良いということで、ワタシはMさんのリクエストにより錯体の論文を紹介した(Mさんは専門が材料だったのだが、なぜか今のボスが錯体系の材料を作りたいらしく、Mさん自身が錯体化学についてよく尋ねてくる。)

 ワタシが選んだ論文は昨年のScience誌に投稿されていた"Cleaving Mercury-Alkyl Bonds: A Functional Model for Mercury Detoxification by MerB"というタイトルの論文。要は有機水銀の無毒化に関する論文だ。有機水銀といって思い出すのはチッソが引き起こした水俣病だが(論文の背景でも紹介されている)、アメリカ人にとってもそれなりにショッキングなものだったらしい(同僚のJohnも知っていた)。むか~し、中学のころに社会の時間で公害病について先生が説明していた。ナゼか妙に詳しく。たとえばチッソが生産していた"アセトアルデヒド(そもそもこの言葉は中学の化学では教えない)"を合成するときに触媒として"無機水銀(実際に使われていたのは硫酸水銀)"が使われていたこととか、それを海に垂れ流しただけで有機水銀を排出していないというチッソの釈明とかだ。実際、水俣病が発生した当時はまだ有機水銀が水俣病の原因物質であると同定出来ていなかったのだが、この妙に詳しい知識をナゼ社会科で習ったのか未だに疑問であるし、未だに覚えている自分にも軽く驚くね。
 水銀はきわめて有毒である。とくにメチル水銀などの有機金属化合物。研究室レベルでもどこかでメチル水銀を吸引して亡くなってしまった人の話とかをたまに耳にする。ワタシはやはりむか~し、還元剤としてナトリウム金属を水銀にとかして還元剤として使ったことがあるくらいで、有機水銀は個人的に使ったことはないね。

 さてハナシを戻すと、この世界には水銀を無毒化する酵素があるワケだ。有機水銀自体は自然界にも稀少量、現れることがあるとか。たとえば火山活動などで水銀鉱脈が近傍にある場合とか。また有機水銀中の炭素ー水銀結合は非常に強固でプロトン存在中でも簡単には切れない。そんなわけで自然に発生した有機水銀は簡単には除去されないわけだ。しか~し長い時をかけてなんだろーな、バクテリアは有機水銀の自己細胞中で代謝する機能を備えたのである。それが発見されたのが20年ほど前、大腸菌のある株の中にあるプラスミド(環状の遺伝子)にだ。このプラスミドには有機水銀の輸送や炭素ー水銀結合の切断、水銀イオン状態から水銀金属への還元などを司る酵素のセットがコードされているのだ。また近年の研究努力で大腸菌以外のバクテリアにもその遺伝子の存在が確認されている。

 今回の論文はそのMerBというタンパク質に焦点をあてている。まさに有機水銀の炭素ー水銀結合を切断して無機水銀として放出する酵素だ。この反応を合成したモデル化合物で再現して、水銀イオンに対する高い配位状態がこの炭素ー水銀結合を弱くするという。そして酵素中でも同じような水銀イオンの高い配位状態が結合切断の重要な因子であるという議論なわけだ。議論としては単純明快だしおもしろい。それに近年、錯体化学では掲載されにくいScience誌ということもあるし、はたまた著書は有機金属化学でも有名な先生。(そーいえば今月末にMSUにノーベル化学賞をとったRichard Schrock教授がくるな......)昔の自分ならただただ感心をしていた......のだが、このMerBタンパク質の研究をやっている論文を3,4報、さらに読んでみてちょっと気が変わったのじゃ。

 MerBタンパク質(organomercurial lyase)における有機水銀の炭素ー水銀結合の切断様式についてだ。生化学のグループは古くからいろいろな立体構造の有機水銀を基質としてMerBと酵素反応させてその生成物から反応様式を判断していた。また重水中での反応速度の違い(solvent isotope effect)についても調べているのだ。(近年も再実験によってその反応様式を再確認している論文がある)つまり生化学者なのにやっていることは泥臭い有機合成なんだよね~、このグループ。その結論では反応様式は求電子置換反応(SE2、electrophilic substitution)。反応に関与する四原子が四角形の中間体構造をとるために立体反転を伴わないんだそうだ。

 まあワタシとしては生モノ屋がここまでやっているのにそのScience誌に掲載されている方は本家なんだからもうちょっとつっこんだ反応機構についても言及してほしいな~と思っちゃんだよね。もちろん紙面に限界があるからさ、そんなこまかいことなんてかけないとは思うけど、footnoteとかにちらっとでも書いてあれば納得したんだよね。(まあ続報には書かれているかもしれないけどね)まあ、第三者からみた勝手な言い分でした~。
 

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【2008/03/09 05:59】 | 研究
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